カニを美味しく届けるための加工方法2022.07.11

カニが漁場から食卓までの距離は遠く、運送に時間もかかります。
カニは水分を多く含む食品なので、新鮮さが命です。
美味しさと安全性を兼ね備えたカニを食卓へ届けるために、さまざまな技術を駆使しています。
今回は、カニの加工方法と品質保持のために使われる添加物についての知識、正しい解凍方法、安全で美味しいカニの見分け方をご紹介します。

カニの販売形態は主に3種類

活きたカニ

活きたカニは鮮度が高いので、安心してプリプリの食感を味わいながら食べられます。
以前は、漁場に近い町の魚市場やカニ専門販売店でしか手に入りませんでしたが、最近はお取り寄せで入手可能になっています。
箱を開けるとまだ元気に動いていることもあります。
常温に置いておくとカニが弱り鮮度も落ちてしまうので、すぐ食べない場合は、氷水に入れて冷暗所に置くようにしましょう。

活きガニを冷凍

活きガニを調理せずそのまま冷凍します。
正しい方法で解凍すれば、臭みも出ず、黒ずんだ見た目になることもないので、カニの旨味の濃さや深みを楽しむことができます。
丁寧に加工された生食可のカニであれば、お刺身としても食べられます。

ボイルガニを冷凍

鮮度を保ったまま流通させるために、ボイルして冷凍するカニです。
特に「浜茹で」は新鮮なカニの旨味と甘味を味わえる加工方法です。
水揚げ後すぐに漁港の釜や漁港に近い加工場で塩茹でします。
遠洋漁業で水揚げされたカニが、船内で茹でられ急速冷凍される場合もあります。
ボイルすることで酸化による品質低下を防ぐことができます。

カニの新鮮さを保つ冷凍技術

急速冷凍

カニだけに限らず、食品を冷凍する際は、短時間で急冷する方が高品質に仕上がります。
時間をかけて冷凍する緩慢凍結では、食品中に含まれる水分が大きな氷の結晶になります。
氷の結晶が大きいと解凍した際に、ドリップと呼ばれる汁が多く出て、水分だけでなく旨味や栄養成分も抜けて品質が落ちます。
急速冷凍を行えば、食品の細胞破壊を最小限に抑制でき、解凍しても品質が保たれるのです。

グレーズ処理

グレーズ処理とは、食品の表面に氷を薄く張ることです。
主な目的は、酸化防止、冷凍焼けからの保護です。
氷の層ができるので、空気に触れることがなくなり、酸化速度が遅くなります。
酸化速度の低下によって、悪臭の発生や変色といった現象を抑えることができます。

酸化防止の添加物を加える

生の状態で1時間放置すると、あっという間に身が黒く変色するくらいカニは酸化しやすい食品です。
これは、カニに含まれる水分の量が多いためです。
酸化防止を目的として、ビタミンC、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウムが使用されます。
酸化は見た目だけでなく旨味も減らしてしまうので、品質維持のために食品添加物が利用されます。

急速冷凍で新鮮さを保てる理由

カニの細胞を壊さないようにする

水の温度を下げて氷にすると、体積が増えます。
カニのように水分が豊富な食品を凍らせると、水が氷になったことで、体積の膨張が起こります。
これにより、細胞膜の破損や組織の破壊が起こってしまうのです。
食品の細胞損傷を最低限に抑えて品質低下を防ぐためには急速冷凍が必須です。

旨味と風味を閉じ込める

食品の細胞が破壊されると、解凍時に損傷したところから細胞内部の水分や栄養素が流出します。
流出する液体の中には、旨味や香りの成分が含まれているので、解凍時のドリップは美味しさの流出を意味します。
氷の結晶が大きくなるのを防げば、細胞の損傷を抑えられるので、短時間のうちに凍らせる技術が欠かせません。

プリプリの食感を保つ

タンパク質が多い食品を冷凍すると、タンパク質の構造が崩れて変性します。
変性とは、温度変化や酸、圧力などでタンパク質の立体構造が壊れ、見た目や食感が変わることを指します。
冷凍による変性で、身が軟らかくなったりスポンジ状になったりすることがあります。
急速冷凍によって、変性速度を冷凍する速さが上回れば、変性の影響が少なくなります。
プリプリの食感を保つために急速冷凍は欠かせない技術です。

グレーズ処理のメリットと解凍方法

グレーズ処理はカニの身を氷の膜で覆う保存技術

グレーズ処理は主に水産物の品質を保つ目的で利用されます。
グレーズ処理を施すと、酸化防止、冷凍焼けからの保護、乾燥防止効果が得られます。
適切な処理環境でグレーズ処理を行い、氷の層を重ねた皮膜を作ることで長期間の保存や鮮度の保持が可能になります。

乾燥と酸化を防ぐ

水分が多いカニにとって、乾燥と酸化は大敵です。
カニの身が乾燥すると、水分の喪失によりスカスカの食感になってしまいます。
プリプリの食感を守るためにもグレーズ処理が欠かせません。
また、氷の皮膜で完全にカニを覆うため、外気と触れる機会が無くなります。
外気に含まれる酸素は食品の品質保持を脅かす存在なのでグレーズ処理でバリアを作っています。

電子レンジや熱湯をかけての解凍は間違い

グレーズ処理されたカニの身を美味しさそのままに解凍する方法をご紹介します。
それは、水あるいは氷水でグレーズを溶かすことです。
電子レンジで解凍したり、熱湯をかけたりしてしまうと、急激な温度変化で品質が低下してしまいます。
表面のグレーズを冷たい水で溶かしたら、身が半解凍状態になるまで冷蔵庫などに入れておきましょう。

添加物は食品の安全や品質を守る

亜硫酸ナトリウム

食品の品質低下の原因は、食品中に含まれる油脂が酸化されること、微生物や腐敗菌が発生することです。
亜硫酸ナトリウムには、食品の酸化を防止する作用があります。
また、漂白剤としての機能、微生物などの発育と増殖を妨げる機能を持つので、酸化防止剤だけでなく、保存料として使用されることもあります。

エリソルビン酸ナトリウム

エリソルビン酸ナトリウムも酸化防止を目的に使用される食品添加物です。
食品中に含まれる油脂の酸化を防ぎ、保存性を良くします。
カニ以外にも、畜肉や清涼飲料水に添加されることが多いです。
他の添加物でも同様ですが、食品に使用する場合、内閣府食品安全委員会で定められた量を遵守しているので、体への害は気にしすぎなくても大丈夫です。

ビタミンC

ビタミンCは健康に良い栄養素として有名ですが、強い抗酸化作用を持つことから、食品加工や食品の品質保持にも応用されています。
カニだけでなく、幅広い食品に利用されているので食品添加物の中でもなじみ深いです。
V.C、L-アスコルビン酸といった表記で成分表示欄に書かれることもあるので知っておきましょう.

安全なカニの見分け方

不快な臭いがない

魚介類は時間経過とともに、旨味成分が腐り、腐敗臭を呈するようになります。
カニは、水分も旨味も多い食べ物なので、鮮度が落ちるスピードがとても速いです。
市場や店舗でカニを購入する場合は、不快な臭いがしないことを確認するようにしましょう。
お取り寄せ、購入後に自宅で保存していた場合も調理前に臭いを確認する作業が必要です。

エラの黒い変色がない

カニは水分が多く、みずみずしい食感が売りの食べ物です。
しかし、水分の多さゆえに酸化しやすいという短所があります。
カニのお腹側にある甲羅を開くと、エラまたはガニと呼ばれるびらびらした器官が見えます。
最初に腐るのはエラなので、ここが黒く変色していなければ、新鮮で加工されて間もないことが分かります。

加工工場の情報がある

農作物や畜産物を販売する際に、生産者の顔が見えることをセールスポイントにすることがあります。
私たちが持つ食の安全意識は年々高まっているので、生産者はそれに応えるために、できるだけ情報を開示する努力をしています。
産地を明確にしている、どこでどのように加工されているか分かりやすくなっているようなカニは安全性が高いと判断できます。

カニを美味しく届けるための加工方法まとめ

カニは水分とタンパク質が多いため、美味しく味わうには鮮度が命です。
急速冷凍とグレーズ処理、必要に応じた添加物の使用によって、食感や旨味が保持されています。
今回ご紹介したカニの加工方法を踏まえ、新鮮で安全なカニを選び、正しい解凍方法で調理して美味しさを楽しんでみてください。